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SECRET 03
たまに一緒に買い物に出る未希子が、思いもよらない場所でお気に入りアニメキャラクターの関連グッズを見つけた時のような、正直言うとちょっと怪しい笑いに、私は少し溜息を交えて反論した。
「未希子、美少女って、色々語弊があり過ぎるから…」
「はあ? 語弊って意味知ってる? あれが美少女じゃなきゃ何がそれなのよ」
「あれはね、関わったみんなの演出力の賜物であって、私がどうこうっていうワケじゃないの」
話は、大学二年生の時に成り行きで参加したミスコンの事。
つまりは六年も前の事になる。
メイクアップ研修室を名乗るサークルの先輩に捕まって、文字通り上から下まで大改造され、予選を勝ち抜いた十人の中から、当時の司会進行役の言葉を借りれば"これはかなりの番狂わせ"により、私は二位に入ってしまった。
その秘訣は間違いなく、先輩が魔法のように施してくれたメイクと、類友で集まった演出研究部のメンバー達。
某アニメの「メークアップ!」という変身シーンの音声を使って印象操作でイメージアップ、更に、マジシャン同好会の演出が入れば、いかにも普通の女の子が、まさに学祭のシンデレラ。
知識を競う二次予選のクイズまでは楽しかったけど、ドレス姿にされて舞台に押し出された時は泣いてしまいそうだった。
それでも、頑張ってくれた先輩達の努力を無下にする事も出来なくて、私なりに精一杯頑張ったけれど。
「何言ってるの。演出であれだけキレー可愛くなれるんだから、やっぱり咲夜は美少女なの! どんなにいい道具が揃ってたって、素地が無いとどうしようも無い事は多いのよ! はあぁ、眼鏡の向こうに隠れるキュートな素顔。萌えるわ~」
「…もう」
未希子の言葉に、当時の遣る瀬無さがぐんぐんと蘇ってきた。
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