/316ページ
"こんにちは。ケイトと申します。ケイと呼んでください。顔写真はサイト内でご確認ください。もし変更を希望される場合は、デート日二日前までは変更が可能です。ただし、変更を希望するホストの予定が既に埋まっている場合は、一回のみデート日の変更が可能です。体調不良、急な生理などはご相談承ります"
"コースはセックス付、ラブラブ恋人コースでよろしいでしょうか?"
"申込書にはホテルご希望との事でしたので、ホテルの選別、予約等についてはサヤさんに一任します。決まりましたらご連絡ください"
"元彼を忘れたいという動機でご連絡くださる女性は多いので、気にしなくても大丈夫です。私が上書きできるように頑張らせていただきます。楽しい時間を過ごしましょう"
"サヤさん。ようやく明日お会いできますね。待ち合わせ場所は…"
半月かけて、ケイさんと交わしたのはこんなやり取り。
『あはは、相変わらず定型文からの使いまわし。あのチャラさでこの文面はないよね~』
『逸美、ケイさん知ってるの?』
『え?』
『あ、もしかして…』
『違う! ないから! ケイトは無かった! 私、指名なしの時もマッサージがオプションでつけられる人だけだったし、ちょっとこのタイプは見た目で却下だし…』
『そ…そんなにチャラい?』
『チャラい。って、え? まさか咲夜、ケイトの写真、見てないの?』
『うん』
『なんで?』
『何となく…。メールも、システムか、担当の人が対応してるのかなって思って、きっと事務処理と変わらないんだろうなって、なら私も、ちゃんと事務的に行こうって』
『ま…真面目さがちょっと違う方向にいってる気がするけど…』
『え?』
『ううん。そうね。ま、ここはイケメンが多いし、余程のハズレはないと思うし。変な理想に焦がれるよりは、そっちが正解かも。やっぱり本気になって、ストーカーみたいに付き纏う女もいるんだって』
『好きになってって事?』
『そ。でもそこは気を付けないといけないところ。優しくするのも、丁寧に愛撫するのも、仕事だからでしょ? 愛してくれてるからじゃない』
『うん…』
『これは遊び。本気になっちゃ、駄目なのよ』
そして迎えたデート当日。
やってきたのは、ケイさんではなく、サクさんと名乗る人で、
『え? 別の人が来てたの?』
『うん。今日はサクって呼んでって言ってたけど、ケイさんとは違う人だと思う』
『サク? そんな名前いたかな。――――――メンバー紹介メンバー紹介…はい、これがケイト』
『凄い…ほんとに金髪だね』
『やっぱり違うんだ?』
『うん。サクさんは真っ黒だったよ』
『黒も最近は多いんだよね。待ち合わせの時、いかにもって感じじゃないから人気みたい。黒髪…黒髪…あ、ちなみに、私の馴染みはコレね』
『わ、見せて? ――――――逸美、三位って…』
『マッサージテクが凄いの。指使いが絶妙なの! 予約は大変だけど値段が変わるわけじゃなし! どうせなら上手な人のとこ行くでしょ? ネイルだって、美容院だって』
『うん。そうだね。うん、大丈夫』
『ううう、なんか咲夜が生意気になった~』
『ふふ、――――――ん~、この中にはいないな、サクさん』
『そっか。だとすると、顔出しNGで、指名無しの客だけ相手にしてるホストなのかも。私の二人目がそんな感じだった』
『私…サクさんがシャワー浴びてる間に出てきちゃって、お金、足りてたのかなって、翌日急に心配になって…』
『十万置いてきたんでしょ? 十分お釣りがくるから大丈夫よ』
『ほんと?』
『ほんと。それに、携帯の解約は一日、ちゃんと待ったんでしょ?』
『うん』
『未払い分があったら速攻で連絡くると思うよ。その辺りは厳しいって聞いてる』
『じゃあ、大丈夫かな』
――――――別の意味で、大丈夫じゃなかった。
最初のコメントを投稿しよう!