第九章

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「それ、スゲー嬉しいかも。」 突然ぎゅっと抱きしめられて、腕の中に収まる。 「…なんか恥ずかしいな。絶対桐山とか土生に冷やかされそうなんだけど。」 「はは…あり得る。わざと聞いてきそうだよな。いいじゃん、水瀬さんへの牽制にもなるしー。」 …あれ、折原に水瀬さんの事話してなかったっけ? 「折原、水瀬さんには言ってるけど、折原と付き合ってる事。」 「知ってる。でもあの人なんか油断ならないから。うまくいってる事アピールしときたいだけ。」 アピールって…。 「…香椎だってその方が安心だろ。」 …あ、これってもしかして。 「折原もいろんな女の子に声かけられないようにって意味も…入ってる?」 そういえば会社でも女性社員の知り合いは多いし、俺が嫌な思いしないために? 「まぁ、一応……あー!なんか自意識過剰みたいで言うのヤだったのに。」 わたわたしている折原を見るのは面白いし、なんかこういう風に前より自然に話せるようになってこの距離が心地いいと思うなんて。 「…でさ、また都合イイ時でいいから俺の両親、会ってみねぇ?香椎の両親にも挨拶…したい。」 「……うん。」 きっとこの先、うまくいく事ばかりじゃない。 ずっと先の未来を見ることも勿論大事だけど 俺は折原と過ごす今日や明日を一日一日大事にしたい。 良い事も悪い事もどんな事が起こるか予想はできないけれど、 二人で居るって そういうことだと思うから。 「運命の番」 俺には縁がないと思ってたし、折原なんて大嫌いだった。 そんな奴に、愛おしいって思う日が来るなんて想像もしてなかった。 でも今は思うよ。 「お前で…良かった。」 「え?…何て?」 「なんでもない。」 END
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