第二章

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俺はαの両親を持ち、兄が二人いるが一番上がα、二番目がβ、そして俺がαという性を受けた。 もちろん折原といえばトップクラスの企業の中の一つで、詳しくは知らないがホテル関係を日本のみならずいろんな国に展開しているらしい。 …らしいというのは一番上の兄がいずれ継ぐと決まっているからだ。 だから俺はある程度のことは自由にさせてもらっている。 兄は地位とか拘るようだけど、俺は絶対嫌だね。 なんで会社のために結婚相手をえらばないといけないのかわからない。 もう亡くなってしまったが、母方の祖父は2人いた。 αとΩの夫婦で、番だった。 中学時代は複雑な家庭環境もあって、よくじいちゃん家に出入りしていた。 どっちのじいちゃんも優しくて、二人とも幸せそうで中学生だった俺はうらやましいと思った。 「要はαだったよな。お前は…運命の番って知ってるか?」 αのじいちゃんが、遠くを見ながら懐かしむように言う。 「運命?聞いたことない。」 「番になれるのはαとΩのみというのは知っているだろう?勿論心が通じ合っているもの同士結ばれるのが一番いい。 だけど生きていたら、運命の番というまぁなんていうかな…。合った瞬間ほかの他人とは違う特別な何かを感じるんだ。まぁ世の中は広い。 死ぬまでに出会うことすらないかも知れないけどな…。出会ってしまったらお互い惹かれずにはいられないんだ。」 「じいちゃん達も運命?」 「そうだよ。私はね、αだったし、自信過剰で随分やんちゃをしていたんだ。だけど出会った瞬間にわかったよ。 …まぁ要はまだ若い。いろんな人と付き合って本当に自分が大切にしたいと思える人に出会えるといいな。」 運命の番…。 どこかにいるんだろうか。 家柄や容姿で注目されているのも自覚していた。 αの女、βの女、Ωの女、そして男。 誰を抱いても違いなんて感じなかったし、体を重ねる行為もさほど興奮はしなかった。気持ちが良いのは確かだけど。 「…あっ!…あンッ。もうダメだってぇ。」 求められるから抱く。 特定の相手は作らない。 それは俺の外側の入れ物だけを求められていると分かっているから。 「いいじゃん、まだ…ッいけるでしょ。俺まだだから。」 行為自体に快楽はある。 だけど興奮とは裏腹に冷静な自分がいる。 俺はどうしたいんだろう。 「おい、折原ぁ、お前サキちゃんに手ぇ出したんだって?」 「あぁ、誘われたから乗っただけ。」 いつもの大学構内で桐山がうんざりしたように声をかけてきた。 桐山はβだけど判断力が良く、話していて面白い。チャラチャラして見えるけど俺のフォローをしてくれたり、俺の家庭の事情も知っている唯一信頼できる友人だ。 「…特定の相手作ればいいのにさー。つーか、サキちゃん寝かせて貰えなかったって自慢してたぜ。ヤリすぎだろ…あ、それとも良かったとか?」 「いや、清純気取ってるけどかなり遊んでるだろ、アイツ。ヤリすぎって俺1回しか出してねぇし。」 そう…行為自体は快楽はあるけれど、俺の感覚が鈍いのか達するまで時間がかかる。相手によっては途中で萎えてイけない時すらあるからな…。 「…お前、体の相性とかってあったりする?」 「あー…はいはい、そういや前言ってたな。俺は早漏とかじゃねーけど普通に興奮したらすぐイッちゃうけど? でも勃つもん勃つならそういう感じなんじゃねーの?…っっくく、それか遅漏?」
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