第二章

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土生と大学が同じだったらしく、香椎が俺たちにキレた後なんかはよくフォローして間に入ってくれる面倒見のいいやつだ。 最初はαが嫌いなのかと思っていたけれど、水瀬さんには少し笑顔を見せたりしているからそういう訳ではないようで。 水瀬さんも、香椎のことは気にかけているようだし…。 ・・・・・・・なんか面白くない。 そんな考えはなかったことにして、仕事に没頭していたら、ダメ元で行った大手企業で新規の契約が取れた。 時計を見ながら会社へ戻る。 「明日プレゼンか…間に合うかな。」 今から帰ってプレゼンの資料つくって…いや、データの入力もしておかないといけない。 まだ香椎はいるだろうか。 速足でエントランスを抜けると、丁度帰るところなのであろう香椎と土生がいた。 香椎に要件を伝えると、仕事と割り切ったのかデスクに戻って作業を始める。 特に会話もなく作業に没頭して1時間くらい経った頃、甘い香りが鼻をかすめた。 香椎は感じないみたいだったけど…腹減ってるせいかな。なんかこううまく言えないが、すごく好きな香りだ。 気分転換にコーヒーでも飲もうかと自販機へ向かった。 だけど飲んでいる途中であり得ないくらいの、甘い香りが広がる。 間違いない、さっき感じた香りだ…。 「…なに、コレ。」 Ωのフェロモン…? っていうことは香椎は発情期ってことか? いやでも、薬も飲んでいて固定休も今まで取っていないってことは薬で症状が抑えられていたということだ。 なんで急に…。 誘われるように、部屋の入口のドアを開ける。 床に這いつくばる香椎が見えた。 もうこの時点で自身の下半身に血液が集まってきているのがわかる。 「ッッ土生、に電話ッ…」 近づいてはいけないことは分かっている。 涙目で消え入りそうな声で香椎は俺にスマホを差し出す。 あぁ…だめだ。 スマホを受け取らないと…。 理性とは裏腹に、初めて見る香椎の乱れた姿にありえないくらい欲情した。 受け取る筈だったスマホは床に転がり、俺は香椎の上に跨った。 こいつが欲しい 抱きたい 頭の中が真っ赤になる。
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