第二章

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気づいた時には、香椎は気を失っていた。 辺りを見回すと、床に散らばった服、香椎の体は出された欲望でぐちゃぐちゃになっていて体のいたるところに赤い斑点…。 「…………マジかよ、俺。」 まさか、まさかヒートを起こすなんて…。 勿論Ωと性行為をしたことはあるが理性がぶっ飛ぶなんて今までなかった。 しかも会社の決まりで俺はヒート抑制剤まで服用していたんだぞ…。それなのに…。 とりあえずどうにかしないと…と香椎の体を持ち上げる。 「……ッツぅ、」 小さく上げた声にドキッとする。 体を拭いて着替えさせようとした瞬間、香椎の後ろからツーっと白い液体が流れてきた。 「…やべぇ、まじ、どうしよう…。」 しかもどう見ても量が一回とかじゃない。 時計を見てももう夜中…終電はない。 とりあえず、俺のマンションに連れて帰ろう。 香椎をベッドに寝させ、濡らしたタオルで体を拭いた。 つーか、マジで肌白い。 寝るときは穏やかな顔してんだな。…俺と話すときはだいだい眉間に皺、寄ってるしな。 なんか焦りとは裏腹に穏やかな気持ちもあって複雑だった。 シャワーを浴びて横になっても寝つけない。 香椎がΩだってことすっかり忘れてた。 途切れ途切れの記憶の断片をつなぎ合わそうとする。 「…こいつ、あんな顔、すんだな。」 抱かれている時の香椎はすごく綺麗で、色っぽくて興奮した。 あんな風に求められたら大抵の男は…。 いやいやいやいや、俺は何考えてるんだ。 「…ッん、」 その時香椎の眼がぼんやり開いた。 ぼんやりした眼が俺の顔に焦点を合わせていく。 やっと認識できたのか目がバチッと開いた。 「は!?」 ガバッと勢いよく飛び起きた香椎は 「っぅ!いっ…て。」 腰をさすりながら俺を見る。 「…ここ、どこ。」 「お、俺のマンション。香椎気を失って終電もなかったから連れて帰りマシタ。」 ヤバい…怒るか?…絶対そうだよな。相手俺だし。 でも予想外に少し黙ってから 「…悪かった。」 「は?ちょっとやめろって。香椎、え?」 あの香椎が俺に頭を下げている。 え、なんで? 「俺が発情したせいでお前を巻き込んだ。自分の管理ができてなかった俺が悪い。」 「えっと、でもお互い抑制剤は飲んでた、だろ?」 香椎は頭を下げたまま小さく頷く。 「じゃ、しょーがないじゃん。つーかむしろ俺がやっちゃったから俺のほうがごめんだし。」 「…悪かった。忘れてくれ。」 顔を上げた香椎は真っ赤な顔をしていて、少し泣きそうに見えた。 「忘れた方がいいなら忘れる、けど香椎とのエッチ、すごい良かった。」 そういうと今度は真っ赤な顔で怒ってきた。
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