第三章

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「へぇ、香椎誰かと寝たの?」 「…アクシデントみたいなもんで。お互い恋愛感情はないですけど。」 「………。」 なんとなく、居心地が悪い。 軽蔑、されたかな…。 「ま、お互い割り切ってるならいいんじゃない?その時だけって。 へー…そっかぁ。なんかショックだなー。……もしかして初めてだったりする?」 「ゴホッツ!」 「あ、マジ?そうなんだ。」 「……。」 この年で初めてってなんか恥ずかしい。けど本当のことだし。 「で?香椎はその人とどうにかなりたい訳?付き合いたいとかまたエッチしたいとか。」 一気に顔が熱くなる。 ブンブンと思いっきり頭を振る。 「ない…ないです!」 「でもさ、香椎はΩなんだから気を付けないとダメだよ。知らないかもしれないけど香椎のこと見てる奴結構いるんだから。 …もしさ、面倒事とかが嫌だったら俺と付き合ってみない?お互い変な虫が寄ってこないだろ? それに…俺も香椎のこと前から気になってたんだよね、実は。」 おちゃらけたように言っているけど、水瀬さんの眼は真剣に見えた。 「でも、俺は今まで誰かに交際を申し込まれたこともないですし、水瀬さんのメリットになるとは思えません…。」 「っていうかさ、まぁ俺からの頼みになっちゃう感じなんだけどさ。ほら、香椎はいつも折原と言い合いしてるだろ?だから少し怖いイメージがついてるのかもしれない。 俺と付き合うことで皆が抱いてる香椎のイメージも変わるかもしれないし。 俺も香椎のこと気に入っているから仲良くなりたいってのもあるし。 考えてみてよ?」 「……はい。」 この人が人気があって一目置かれているのがわかる気がする。 「…おかわりする?」 「あ、はい、じゃあ同じ物を。」 その後は仕事の愚痴とか他愛もない話をして店をでた。 「香椎家どっちだっけ?」 「あ、大丈夫ですよ、駅から近いので。歩いて行けます。」 「じゃ、駅まで送る。」 …なんかこういうことされると普通は勘違いしちゃいそうになるよな。 本当に水瀬さんで出来る男だ…。 駅までの道を並んで歩く。 「…さっきの急がないから本当に考えてみて。」 「はい。」 そういって視線を前に向けた途端、見慣れた後ろ姿が目に入った。 「あ、あれ?折原じゃない?」 水瀬さんも気づいたようだ。 「女性と一緒…みたいだね。会社の子じゃなさそうだけど。遊んでるのにモテるもんなぁ。」 その言葉に、やっぱりって体の中の一部が冷たくなった気がした。 ほら、やっぱり。 こんなもんだって。 分かってただろ。 俺がきっと気にしすぎて意識しすぎてただけ。 アイツはもうこの前のことなんて綺麗サッパリ忘れてる。 「…ですね。ホントあんな奴のなにがいいんだか。」
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