第三章

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そして飲み会当日、席は自由ということもあり俺は土生と隣に座った。 向かいには折原、桐山が座っていて、水瀬さんは上層部に呼ばれて違う席にいる。 …っというか、せめて折原とはもう少し離れた席が良かった…。 「折原、向こうで女性社員呼んでるぞ、受付じゃね?行かなくていいのか?」 桐山が声を掛けるけれど 「面倒だからいい。」 と気にしていない様子。 以前の折原から比べたらありえない言動だけど…。 乾杯の合図とともに飲み会が始まった。 暫くするとざわざわして少し離れると声もかき消され、大きな声じゃないと聞き取れないくらいになってきた。 「…でー?こないだの話はなんだったんだよ?」 土生は気になっていたのかそっと聞いてきた。 …まぁこの感じなら周りには聞こえることはないかな。 「あー…なんていうか返事じゃなくて。…そのデートの誘いみたいな。…今日だったんだけど飲み会になったし結局別の日になりそうだけど。」 「デート…。」 「い、言っとくけど傍からみたら男同士だし…どこにとかは決めてなかったけど。」 「デートねぇ…なんかうれしいわ俺。香椎人気あるくせに誰ともそこまでの関係築こうとしてかったじゃん? 香椎から恋愛相談受ける日は来ないんじゃないかって思ってたし。」 確かに。 大学時代から恋愛に関しての相談をしたことがない。 だって恋愛してなかったし、興味すらなかったし。 「…なんかこないだから何こそこそ話してんのー?気になるじゃん。同じ同期なんだし隠し事なしだろ?」 …さすが桐山。 周りをよく見ているというか気が付くというか…。 土生が少し俺に目配せをして、 「いや、香椎に春が来そうって話。俺は大学からだから長い付き合いの特権ってやつでこれ以上は内緒な。」 「え、マジ!?良かったじゃん。…それにしても香椎が…ねぇ。なんか意外なんだけど。なぁ折原?」 「……っ。」 折原はぼーっとしていたのか反応がない。 「…折原?」 「ッあぁ悪い。すきっ腹に飲んだから少しアルコール回ってたわ。」 やっぱり俺の恋愛には興味ないよな。 同じ同期でも俺と折原の関係性は薄い。 そりゃ、あんなことはあったけどさ。 土生と桐山は今度はゲームの話で盛り上がってるし…。 俺と折原は話すこともなく、ただ淡々と飲んでいる。 「折原さん、お隣いいですか?注ぎますよ。」 さっき呼んでいた女性社員だ。 二人とも可愛い子だな。 「あ。ありがと。」 そういって目の前で繰り広げられる光景を見ないようにしながら、はやくお開きにならないかな…と考えいた時だった。 「香椎。」 俺の隣に腰を下ろしたのは水瀬さん。
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