第一章

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この世には男女の性別とは別に、α・β・Ωというもう一つの性がある。 αは割合としては少ないが、企業のトップや責任ある仕事についているものが多い。 つまりはβやΩと比べて、すべてにおいて秀でている。 体格も恵まれていることが多く、αとして性をうけたその日から輝かしい未来が待っているのだ。 人類においてほとんどを占めるのがβだ。 生まれながらに特性があるわけではないが、努力次第ではある程度のところまでは出世はできる。 αやΩと結婚するということはあまりなく、一般的にはβ同士で結婚することが多い。 そしてΩ…。 彼らはαよりも希少とされる。思春期以降、3か月に一度発情期というものがある。 大体1週間くらいだが、その間は堪えがたい性衝動が起こり、αを誘うフェロモンを放出する。 男女とも妊娠が可能であり、発情期期間中は妊娠しやすいといわれている。 何十年か前まではΩと診断された奴は社会から排除されていた。 つまり、家で飼い殺しにされるか身売りされたり、玩具のような扱いだった。 だが、近年では医療も発達し、薬の開発やΩに対しての差別や偏見もなくなりつつある。 企業でもすべての性が同じフロアで働くところが増えてきている。 その場合はαはヒート抑制剤、Ωは発情抑制剤を服用し、発情期の予定時期は休みが保証されている。 そしてαとΩの間にのみ<番関係>というものが存在する。 これは発情期性交中にαがΩの項を咬むことによって成立する。 番関係が成立すれば、Ωは発情期に番以外のαを誘惑することはなくなる。 ただ、番のαとの関係はどちらかが死ぬまで解消できないし他のαとも拒絶反応が出るため性交できない。 よって番を持たないΩは首輪をつけて生活することが義務づけられている。 同じ人間なのに、どうして生まれてから性によって人生が決まってしまうんだろう。 そして俺は、αの父とΩの母を持ち、思春期に無念にも発情期を迎えてからΩとして生きる人生を強いられることになった。 俺の場合は薬がよくあったようで、最初以外はほとんど薬で抑えることができ、発情することなく生活できている。 でも未だにΩの関わる犯罪はなくならない。 別にΩとしてを産まれた事を悔んだりはしていない。自分の両親は幸せそうだと子どもながらに思っていたから。 ただ自分が番いたいと思える相手に出会える気はしなかった。
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