第四章

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少し時間をおいてから、再び部屋の前に立つ。 静かで、キーボードの音だけが響いている。 「…まだ居たんだ。」 さっきのことは頭から打ち消して、平常心を保ちながら部屋に入る。 香椎は俺をみて少し驚いた表情をしている。 「あれ、帰った筈じゃ…。」 「…忘れ物。」 目的のものを見つけて、デスクからスマホを取る。 「あ、そう。」 「……。」 ホント俺に対しては可愛げとか一切ないよな。 もっとさ、こうあるじゃん? ま、いいけどさ。 「…これ、やるわ。…お疲れ。」 「…っ、え?俺に?」 コーヒーを香椎の目の前に置く。 今までそんな事したことないからか香椎はテンパってるみたいだけど。 「そ。じゃな。」 そのまま部屋をでて速足で駅まで歩いた。 …っつーか、香椎相手に何緊張してんだ俺は! ガキかよ。 急に自分のとった行動が恥ずかしくなってきた。 …別に仕事仲間なら普通だろ。 アイツが大げさな反応するからこっちまで恥ずかしくなってきた。 普段澄ましてるくせに、予想外のところで動揺するし。 俺をけなすときはスラスラ話すくせに、普通に話すだけでどもったりするし。 …隠し事も下手だし。 色々スマートにこなせそうに見えて恋愛は奥手だし。 言ってる事とやってる事が矛盾してんだよ。 …本心が知りたいって言っても教えてくれないんだろうけどさ。
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