第一章

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人事異動で、部署が移動となったこの春…会社の掲示版のモニターに映し出された自分の名前。 香椎 伊織(かしい いおり)現在27歳。 現在保険会社に勤務している。 Ωは基本的に事務作業で会社の中で過ごすことが多く、データの管理や新規顧客のデータ入力などを主にしている。簡単に言えば営業するものとペアを組まされ、事務作業を担当する…みたいなもんだな。 で…俺は別の営業所にいたわけだけど…人事異動の詳細を知るために今日は本社まで足を運んだわけだ…けど。 ペアを組む相手は自分の上に名前のある人物だと理解はしている。 俺の上にある名前は折原 要(おりはら かなめ)27歳。 そう…同期で、いや会社で一番そりが合わないというか嫌いな奴だ。 「まじ……ないわ。」 がっくりと肩を落としてモニターの前から離れる。 だっていくら見たって結果は変わらないのだから。 「あれ、伊織もう確認したの?」 声をかけてきたのは一つ上の先輩の光成 八尋(みつなり やひろ)。 彼もΩで一緒の営業所だった。 「…はい。光成さん、俺もうだめかもしれません。」 光成さんは俺が折原が嫌いなことも知っている。 モニターを見た折原さんは、 「あーぁ、運命的だねぇ…、」 面白がってるよな、絶対…。 「でもさ彼、イケメンでαで人当たりよくて凄く人気らしいよ。成績もいいみたいだし。ほら、うちの営業所でも本社行くって言ったら女子社員は彼目当てで雑務でも行くっていうくらいだしさ。」 「ハッ…ただ単に節操なしってことですよ。」 人気がある?女の子とっかえひっかえしてるという噂は嫌でも耳に入る。 仕事が出来ようが出来まいがだらしない奴は信用できない。αってだけで偉そうにしやがって。 「へぇ、言ってくれるじゃん?イオリチャン。」 ぞわっとするくらいのオーラ…、 あー、ま、別に聞かれててもいいんだけど。 「…おはようございます。鳴宮(なるみや)さん、…オリハラサン。」 鳴宮 彰人(なるみや あきと)さん。光成さんと同期だ。学生時代からの付き合いらしい。 鳴宮さんもαだけど全然鼻にかけることはない。ただやっぱりオーラはすごくて、物腰やわらかいけどαなんだなってわかる。 「おはよう、香椎。八尋も。」 …ちなみに、光成さんと鳴宮さんは付き合ってたりする。いずれ番になるつもりなんだって。上にも報告済み。 「おはよ、彰人。俺たちやっぱペアで組まれてたな。これからよろしく。」 「おう。」 あー光成さん幸せそう…。 「…で誰が節操なしだって?」 こいついた事忘れてたわ。 つーか、水差すなよ、今いい雰囲気だっただろうが。 「分かってんのに聞き返してくんなよ、耳鼻科行けば?」 「ハッ、女みたいなツラしたお前に言われたくねぇわ。」 「その女みたいなツラした奴を誘ったのはどこの誰でしたかねー?」
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