第六章

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「……お前ってさ、み、水瀬さんのと…その。ほら、前言ってたじゃん。付き合うカモみたいな話。…どうなわけ。」 「…え、そ…そんなこと急に言われても。」 何、顔真っ赤にしてんだよ。 「…こないだ、キス…してるの見っちゃったんだよね。」 「お、お前に関係、ない…だろ。」 関係ない? 俺があんだけ運命の番かもとかいう話をしといて!? しかも肉体関係もあった相手に。 そりゃ一回目は不可抗力で二回目は俺から頼んだから(半分脅したけど)…こいつの意志ではないかもしれないけど。 「…よく、わかんないんだよ、俺も。好きとか。」 その言葉は本当のようで視線を彷徨わせている。 「…もしも、さ。俺が運命の番とか関係なく香椎の事が気になってるっていったら…どうする?」 「……え。」 意味が分かっていないのかポカンとしている。 「だからさ、その…俺と付き合わないかって…こと…なんだけど。」 今夜どう?とか誘えるくせに付き合おうっていうほうがスゲー恥ずかしいんだけど…。 「………。」 下を向いたまま返事がない。 「おい、かし…い」 肩を掴んで顔を覗くと、 「…み、見んなって…!」 戸惑っているのか恥ずかしいのか表情がよく見えない。 ただ可愛いって、愛しいって気持ちが自然に沸いてきた。 キス、したい。 触れたい。 「………。」 引き寄せられるように顔を近づける。 香椎は少し震えながら、何をされるか気づいた。 ぎゅっと目をつむったのを見て、 はっと理性を取り戻す。 「キス…したいけど。今はしない。 香椎が俺を選んで、俺が欲しいって思ってくれたらする。我慢するからちゃんとさ、俺のことも考えてくれないか。」 欲望に任せて行為をすることは簡単だけど…。 香椎にも自分の気持ち、ちゃんと考えてほしい。 俺が真剣なんだって分かってほしい。 過去は消せないし、チャラチャラしてて信用が低い俺が信じてもらうには行動で証明するしかないから。
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