第六章

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それからは、自分が気持ちを伝えられて隠すことがなくなったからなのか、香椎には戸惑うことなく接することができるようになった。 …もちろんケンカじゃなく。 「それ資料?」 たくさんの資料を抱えて前を歩く香椎を見つけると 「…持つ。」 自然に話したり出来るようになった。 まぁ…その反面 「え!いいって…。あ…ありがとう。」 香椎の方がなんか戸惑っているような感じだけど。 桐山と土生にもちゃんと話した。 「…あーまぁなんかそんな雰囲気はあったからもしかして…って思ってたけど。つーかもっと早く言えや!」 と桐山には怒られ、 「俺は香椎からも色々と聞いてたから、なんとなく予想はしてたけどね。 …ま、水瀬さんとじゃなかなか厳しいと思うけど。頑張って。」 やっぱ土生は聞いてたのか。っていうかイロイロってところすごく気になるけど。 社内では完全に水瀬さんと香椎でデキてるって噂になってるし、二人がよく一緒にいるもの見かける。 気にならない訳じゃないけど、決めるのは香椎だから。 「なんか、最近折原余裕があるね?」 「え?あぁ、お疲れ様です。水瀬さん。」 「…前は俺が挑発してたら乗ってきてたけど、何なのその余裕。」 念のため香椎や周りに人がいないか見る。 「別に余裕があるわけじゃないっすよ。ただ、水瀬さんと同じことしても勝ち目はないですし。 そりゃ、あんまベタベタしてるとイラつきますけど、感情だけで動きたくないんですよ。」 「…ふーん、大人になったね。」 「一応年齢的には大人ですけどね。」 水瀬さんにライバル宣言してもこの人は俺に対して冷たく当たったりしない。 対等に話をしてくれる。 …嫌いになれればよかったんだけどな。 こんな日の打ちどころのない人相手なら身を引くって選択肢もあったかもしれない。 その方がもしかして穏便にいろんなことを済ませることはできたかもしれない。 水瀬さんと香椎は休日とかも会っているような気配はある。 でも俺が誘ったって絶対不審に思われるだろうし…。
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