第七章

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家に帰りついた俺は、何もする気が起きなくてベッドに座ったままぼんやりしていた。 …そういや、俺折原の連絡先とかも知らない。 明日早めに行って謝ろう。 そんで、俺の気持ちをちゃんと伝えないと。 たとえ折原の気持ちが俺から離れていとしても。 なんとなく胸騒ぎがして俺は眠れない夜を過ごした。 いつもより一時間早く家をでて会社に入ると、水瀬さんはもう出社していた。 「おはようございます。」 「あ、おはよう、早いね。…今朝連絡あって、折原暫く来れないらしいからちょっとバタバタしてるんだよね。」 暫く来れない…? 「えと、暫くって、それはどういう?」 「なんか昨日帰りに事故に遭ったらしくて。ご家族から連絡あってさ。詳しい事はま連絡あるみたいなんだけど。」 昨日帰り? …俺と会った後? 悲痛な表情の折原の顔が浮かぶ。 「ッ!い、生きてるん、ですよね。」 「連絡があった段階では…頭も強く打ってるらしいから詳細はわからないけど。……香椎?」 俺のせいだ。 …俺のせいだ。 「香椎!」 「…は、ぃ。」 水瀬さんが心配そうに俺の顔を覗く。 「俺の、せいです。俺あいつに会いました。ひどいこと…言った。」 泣きたくない。 泣く資格なんて俺にないのに、勝手に涙があふれてきた。 「…香椎?」 「……ッ、俺……ッ。」 「………。」 過去のことを悔んだって時間は戻らない。 後悔しかない。 でももしあの時ちゃんと話をして、帰る道とか時間が違っていたら? 事故に遭うことはなかったんじゃないか。 「「おはようございます。」」 その時、桐山と土生も出勤してきた。 「…あれ、何事?」 二人もしらないのかきょとんとしている。 「あぁ…実は…」 俺と同じように水瀬さんが二人にも説明している。 今どんな状態なんだろう。 命に別状はないんだろうか。 会えるのはいつなんだろう。 いろんな疑問が生まれては消えて、アイツのことでこんなに自分が冷静でいられなくなるなんて。 「…香椎。」 声を掛けてきたのは土生。 「俺、土生…俺のせいだ。」 俺のせいなんていうつもりはなかった。 だってそういえば、必ずそんな事ないって、お前なら言うだろ? 会って安否を確かめたい。 でも会う資格が自分にあるのかって、身動きが取れない。 「……香椎。友人として慰めてほしいと思うならさ、大丈夫だ、お前のせいじゃないっていうよ。 …でも今の香椎は違うだろ? …答え、出てるんじゃないの?」
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