第七章

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答え そう聞いて昨日考えていたことが頭をよぎった。 俺は、折原の事が好きで それを伝えたいと思っていたこと。 そんで、酷い事いってごめんって、仲直りしたかった。 「あいつなら大丈夫だって。タフだし。香椎が行きたいって望むなら俺も背中押したいけど?」 桐山がいたずらっぽく笑いかける。 友人として自分だって心配な筈だけど、そう自分にも言い聞かせているようだった。 社会人として、仕事を放り出していくなんて非常識だし責任感ないって事は分かってる。 でもきっと、この気持ちは「今」伝えないといけないことで。 折原から気持ちをもらってる俺はきちんと答えないといけなくて。 だけどさ、一番はアイツの笑ってる顔が見たい。 「…あの、水瀬さん、すみません。」 そういうと、水瀬さんは少し悲しげに決意した顔で 「…うん、わかった。有給扱いにしておく。これ。」 入院先の病院のメモを受け取り、俺は会社を飛び出した。 もうほかのことなんて何も考えられない。 ただ折原に会いたい。 ケンカしてもいい。 だってケンカって生きてないとできないじゃん。 ナースステーションで折原の病室の場所を聞いて、少し緊張しながらドアを開けた。 病室は6人部屋で仕切られているカーテンが揺れて、折原の横顔が見えた。 窓の外をみているのか、表情まではよくわからない。 だけど …よかった、命に別状はなさそうだ。 気配で気づいたのか、折原の眼が俺の方に向いた。 「…あ、の。事故…ってきいて。」 眼が、合ったのに視線はすぐに外された。 「…仕事、いいのか?」 そりゃ、そうだよな。 仕事ほっぽって来てるわけだし。 しかも来たのは俺だし。 「…それと、どうしても伝えたい事があって。無理言ってこさせてもらった。 折原、ごめん。」
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