第七章

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「……何が?」 ちゃんと伝えよう。 自分の思っていること全部。 「昨日は…ひどい事いってごめん。 折原の言う通り、あの女の人に嫉妬したんだ。 美人だし、折原と並ぶとすごく似合ってて、そんなことを思う自分に自己嫌悪してちょっと投げやりになってた。」 何から伝えていいのかわからない。 寝れなくて何度もシミュレーションした筈なのに。 こんな時でも素直に言えない。 でも今一番伝えないといけないことはわかる。 「…、っ折原が好き、なんだ。」 「……。」 怖い。 もういいと言っていたお前だから、今更とか思うかもしれないけど。 でも伝えなければ後悔する。 無かった事にして友人の一人として過ごすのは俺には無理だから。 「………は、?…ぇ?」 折原は何が何だかわからないという感じで頭を掻く。 よく見たら利き手の右はギプスで固定されている。 「ちょ、ちょっと待って。…え?す、、好きって、」 手から折原の顔に視線を移すと、真っ赤な顔を左手で覆って隠している。 「…あの、…折原?」 「水瀬さんじゃなくて、俺を選んでくれたって…思っていい、んだよな?」 まだ信じられないっていう様子だ。 俺はしっかり伝わるようにしっかりと目をみて頷いた。 「なにそれ…やべー、マジで凄い嬉しいんだけど。。っどう、しよう。」 少しづつ折原に近づく。 そんでそっと左手に触れた。 手が、温かい。 「…心臓、止まるかと思った。お、俺お前が、怪我…って…ッ」 こうやって話せて、伝えることが出来てほっとしたのか、涙がじわっとあふれてきた。 昨日から涙腺崩壊してる。 「…ごめん、昨日の後だし責任感じたかもだけど。全然違うから。その」 「失礼します。」 ノックとともに入ってきたのは女性、と小さな女の子。3-4歳くらいだろうか。 入ってきた途端、女の子が折原の方へ走っていく。 「お兄ちゃん、ごめんなさい。」 目に涙をしっかり溜めて、頭を下げて謝っている。 そしてその後ろで女性も。 どうやら話を聞かせてもらうと、折原が女の子をかばって怪我をしたというこらしい。 折原は二人に笑いかけ、明るく話す。 病室を出るころには女の子もニコニコになっていて、母親も本当に感謝していた。 確かに同じ事故でも小さな体の子どもなら命を落とすことだってあるから。 「おにいちゃん。…いたいの早くなおしてね。」 「あぁ、ありがと。でもね、痛いの一つは治ったから大丈夫。ママとはぐれないように気を付けて帰れよ。」 女の子と内緒話をするように話している様子をみて、こいついいパパになるんだろうなーって思ってしまったけど。 そう思うと同時に少し恥ずかしくなった。 …いやいやいやいや何考えてんの、俺。 つまり、その順調にいけば俺と折原が…。 いや飛躍しすぎだし。 「…何、百面相してんの?」 「べ…別に、なんでも。」 俺の様子に気づいたようで笑いながら俺を見ている。 急に二人になると、なんか今までの自分の発言とかが恥ずかしく思えてくる。 「こっち、…くれば?」 「あ、あぁ。」 ベッドの横の椅子に腰かけて、怪我の具合を聞いた。 右手は骨折していてあとは擦り傷程度。 完治までは1-2か月かかるけど、おそらく大丈夫だろうが検査で異常がなければ来週には退院できること。
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