第七章

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「さっきの、ホントだよな?冗談、とかじゃない?」 照れて真っ赤になっていたくせに、その話を蒸し返さないでほしい。 「っだ、だから…本当だって。」 距離が近くなって、顔が見れない。 「じゃ、……キス、して?」 「…は、?」 「だって、俺見たんだよね。水瀬さんと前キスしてるトコ。…思い出したら腹立ってきた。 香椎から、してほしい、んだけど。」 「ここで?」 「そう。カーテン引いてるからわからないよ。」 っていうか水瀬さんとキスって…いつの事だろ。…見られていたなんて知らなかった。 ……お、俺から? でも、ここまできて出来ないとは言えない。 「……わ、わかった・・・けど、眼、つむって…ほしい。」 「ん。」 えっと、ふ、普通のでいいんだよな? 静かに目を閉じた折原に近づく。 こいつ、ホントに整った顔、してる。 しかもいい匂いする。 匂いに引き寄せられるようにベッドに手をついて、唇を合わせた。 時間にして1-2秒くらいなのに、永く感じて。 離れようと手に力を込めた時、頭を後ろから押さえられて深く唇が合わさる。 「んーッ。」 ぬるり、と舌が入ってきて、眼を開けると、折原と眼が合う。 それだけで体の芯が熱を持つようだ。 折原は俺から視線を外すことなく、そのままキスを続ける。 …これ、恥ずかしすぎる、んだけど。 やっと唇が離れたときは、息が荒くなっていた。 「あー…なんか…。」 そのまま折原に抱きしめられる形となって、俺はされるがまま、右手に触れないように折原の肩に顎を置いた。 「な…何。」 背中に回された左手が熱い。 「…実感してたとこ。香椎が俺を選んでくれたって。 キス以上もしたいけど…我慢する。」 「……ばか。」 こんな何気ないやり取りが、また出来てうれしいなんて。 本当に俺はどうかしている。 それから水瀬さんに連絡を入れて、折原の容態を伝えた。 夕方には土生も桐山も顔を出した。 「ま、大したことなくてよかったよ。な?香椎。」 「俺香椎があんなに取り乱してたとこ初めてみたし。…で?二人は俺らに報告することないわけ?」 「そ、それは…。」 そう、だよな。 協力っていうかいろいろ相談したり背中押してくれたり…なんてお礼をいっていいか分からない。 報告って…恋人っていう言い方って恥ずかしすぎないか? 「おまえらなー…。 まぁでも…感謝してる。俺もうダメだと思ってたし。 その…俺ら、付き合うことになった。 俺は香椎と番になりたいって思ってる。」 「………っ。」 実際付き合ってみて、もしかしてダメになる可能性とかもあると思うけど。 折原のこのまっすぐな言葉は嘘には聞こえなかった。 「…とてもケンカばっかりしてた二人には見えないね。ある意味惹かれあってたのかもしれないけどさ。俺たちにはαとΩのことはわからない。けどさ二人のことは祝福するよ。」 土生がうれしそうに話してくれた。 「…うん。ありがとう。」
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