第一章

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桐山 斗真(きりやま とうま)27歳。 同期で入社、もともと折原と大学が同じだったらしい。 明るくお調子者で折原のストッパー役だったりする。 βだが、身長も折原と同じくらいで高く、スポーツしていたのかがっちりしている。仕事の評価もいいのだが…、ただ…折原の友達なだけあり、少々女遊びは激しいらしいが…。 土生 聖人(はぶみ きよと)27歳。 同じく同期。土生は俺と同じ大学で俺がΩだと明かしても態度を変えず付き合ってくれた。物腰やわらかく大人しそうに見られるが話しをするとすごくしっかりしている。 学校を卒業してもいい友人として付き合いたいと初めて思った奴だ。 よく気が付いてフォロー役には最高、でも勿論対人スキルもあってβだけど上からの信頼は厚い。桐山とペアなのも監視役ってとこかな…。 二人とも本社にいたから会うのは久しぶりだ…。 「相変わらず、だな。」 土生がケラケラ笑う。 あーなんか土生が近くてよかった。じゃないと毎日殺気立つとこだった。 「久しぶり。元気そうだな、土生も。」 土生が後ろにいるなら少し心強いな…。 でも俺…桐山も苦手なんだよなー…要はチャラチャラした奴があまり好きではないってこと。 同期として話すのはいいんだけどな…。 お互い嫌いということもあり、折原とはこれといった会話を交わすことなく、一日一日が過ぎたある日、昼食をとるため土生と食堂に来た。 「うわ、今日混んでるな…。」 二人で座る席を探していると、 「お、こっち空いてるぞー。土生、香椎。」 と桐山が手を振る。 当然折原も居て、その隣には女性社員…制服からして受付だろうか。 「…香椎、大丈夫?」 いや、大丈夫じゃないと言いたい。 だけど、休憩時間も決まっているし、ほかに空いている席がない。 「…あぁ。」 せっかくの休憩なのに…。 仕方なく折原の隣に腰を下ろした。 だって向かいだと嫌でも顔が見えるだろ…。 もう食べることに集中…と思い、頼んでいたうどんを食べ始めた。 「ねぇ、今日のみに行こうよ?こないだ言った店よかったじゃん。」 「えー、でも明日も仕事ですよ?前も寝かせてもらえなかったし…。」 おいおい食事中だぞ…頭おかしいんじゃないか昼間から。 気にしないようにズルズルうどんを食べ進める。 土生が気づいたようで、苦笑いしながらこちらを見る。 「いいじゃん、よかったでしょ?俺とするの。」 「…また今度ね。」 と女性社員は行ってしまった。 「なんだよ、前はノリノリだったくせにさ。」 「お前はしつこいんだって。ねちっこくヤるからだって。」 得意顔で桐山は言っているが、 「別にねちっこくヤってねーよ。俺が終わるまでヤってるだけ。何回戦もヤってねーよ。」 「マジ?くくっ…お前遅漏ってことじゃね?それとも絶倫?」 「スタミナがあると言え。」 そのやりとりに、プツッっと何かが切れた。 「うるせーんだよ、白昼堂々てめーの緩い下半身事情なんて興味ねぇ。こっちは食事中なんだよ。モラルのかけらもないのかよ。 発情期のサルじゃねぇんだから、自重しろよ。」 そういって、席を立った。 もう食欲も失せた…、マジで嫌い。 はぁ…とため息をついて、デスクに帰ってきた。 しばらくすると盛大に笑いながら水瀬さんが戻ってきた。 「…どうか、したんですか?」 「あはは、ッふふ…いやぁ、こんなに笑ったの久々だなぁ。」 確かに、眼にうっすら涙浮かんでるし。 「何か面白いことでも?」 「はははッ!それ、香椎が言う?…っくく、さっきのさー食堂でのやり取りが面白くて…。」 …は?…俺? 「だってさーアイツって紛れもなくαじゃん?誰も逆らえないっつーか上さえも意見しないのに…サルって、ハハッ。」 確かにαだっていうだけで、上は何かあっても黙認するし許されることがある。 でも間違ってることは間違ってるって思うし、それを黙っていたら差別や偏見なんてなくならない。 「俺は、だらしない奴が嫌いなだけです。」
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