第八章

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利き手骨折のため、香椎と期間限定で同棲生活をすることになった。 俺としてはうれしい気持ちだけだったのに…最近は少し困っている。 家でどういう風に過ごしているかとか、何食べてるとか生活感みたいなものは知れて勿論うれしい。 その反面、本人無自覚なんだろうけど…行動とか言動とか可愛いと感じることが多くなって。ちょっと困ることもある。 口調とか態度は冷たいというか冷静なのに、予想していない時に爆弾を投げ込まれる。 こないだの風呂の時も、まさかあんな格好で…。 恥ずかしがったりするくせに、あーゆー時は平気で露出したりするんだからたまったもんじゃない。 ってゆーか骨折してなかったら、とっくに抱き潰してるだろうな…。 でも我慢を強いられる日ももう少し。 若いからか治りも早く、あと一週間もすれば完治らしい。 今では大体のことは一人で出来る、が・・・そういってしまうときっと香椎は帰ってしまうから。 いっそ一緒に住んでしまえばいいんじゃないかと最近思う。 でも何て言うんだ・・・? 変に冗談っぽくいうと、バカな事いうなよ、ってかわされそうだし。 「…香椎、終わった?」 自分の仕事が終わり、横にいる香椎に目をやると、 「…あーもう少し。いいよ、先帰れば?」 眼も合わせず…。しかも今一緒に住んでる事も土生と桐山以外には隠したいみたいだし? もうちょっと普段から愛想良く出来ないかな…。と思うこともあるけど。 「……待つ。なんか手伝う?」 「…………じゃ、コレ。……さんきゅ。」 最後に小さい声でぼそっと聞こえた声。 だーかーらー…そういうのだって。 ・・・・可愛すぎる。 このギャップにやられてんのかも俺。 なんとか仕事を終わらせて、買い物をして帰る。 こーゆーのっていいよな。新婚みてぇ。 そうか…香椎はΩで俺はαだから結婚とかも…出来るんだよな。 考えてなかった訳ではないけれど、今まで誰かと付き合ってその先って考えた事すらなかった。我ながら最低だけど。 昔、じーちゃんの話を聞いて凄いなと思ったのも事実。 憧れて運命をずっと信じてもいた。 だけどさ、20歳を超えて、25歳過ぎて…周りにいる100人、出会ったことのない何万もの気が遠くなる人の中の一人と出会えるわけなんてないって悟っちゃったんだよな。 …そんで忘れてた。 「香椎って、運命の番って…知ってた訳?」 もしかしたら香椎の周りにもそうやって結ばれた人はいるんだろうか? 「あぁ、学校の性教育で習ったくらいだけど。実際出会えることなんてないらしいから自分には関係ないと思ってた。」 ・・・そうなんだ。っていうか、俺香椎の家族のこととか何もしらない。 俺も香椎に家のこと全然話してないし。 「………。」 聞いてもいいんだろうか。 結構家族関係ってナイーブな話のことが多い。特にαやΩの場合。
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