第一章

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どうしてあんなに性に奔放なのかはわからないけれど、まぁαとなれば一緒になりたいと思うものも多いだろう。 Ωは希少なこともあって、この会社には俺と光成さんだけだ。 首輪をしているから大抵の人は知っているだろう。 「そういえば、光成は鳴宮と番うんだって?…まーそんな気はしてたけど。」 「はい、そのようですね。あの二人、幸せそうですし。」 まるで自分の父と母のようにお互いを認め合って、大事にしているのが伝わってくる。 「…香椎はいないの?そういう相手。」 俺は誰かと番いたいとかそういう感情をまだ持ったことがない。 発情期も薬でコントロールできているし。 「いないですね。」 「ふぅん、香椎綺麗だけど、愛想ないからなー、ほら、笑ってみ?そしたらめっちゃもてると思うよ?」 「いひゃいれす。」 頬をびよーんと横に伸ばされて抗議する。 別にもてたいとか興味ないし。 「俺も特に誰かと番いたいとか思った事ないんだよなー。香椎はαとエッチしたことある?」 「や、ないですけど。」 でもαとΩの性行為は凄い…ということは嫌でも耳にしていた。 「まー確かに凄いんだよね。すごく気持ちいいんだけどさ、でもやっぱお互いを思う気持ちあってこそなのかなって思った。 ま、困ったことあれば言ってな。相談乗れるとおもうし。」 ポンポン、と頭に置かれた手はあったかかった。 水瀬さんはαだけど、人間的に尊敬できるし好きだ。 あんな人が番だったら幸せなんだろうな…。 最初はαと聞いただけで警戒していたけど、いろんな考え方の人がいるんだよな。 「はい、ありがとうございます。」 「うーっす、戻りました。」 しばらくして、折原、桐山、土生が戻ってきた。 折原は俺を睨みながら隣の席に腰を下ろした。 桐山はジェスチャーでさっきはごめんと、謝ってくれた。その後ろでは土生がやれやれといった具合で見ている。 だぶん土生がフォローしてくれたんだろう。 気にするな、という意味合いで手を上げ、土生に小さな声で悪いな、というと 「ふふっ、まだ機嫌悪いと思ってたけど、良かった。」 「あー、まぁちょっと話聞いてもらって少しすっきりしたから。」 そういって笑うと、視線を感じた。 「……ナニ。」 少し驚いたようにこちらを見ていたのは折原で、睨み返すように視線を向けた。 「やー、土生にはそんな顔すんだなって驚いただけ。」 「お前には関係ないだろ。」 それからはまた会話という会話のない日々が続く。 といってもあいつは営業だから出てることの方が多いし。 「これ、入力。」 「資料」 お互いの間を紙が行き来するだけ…。 「お前らさーもう一か月なんだけど、ずっとそれでやってくつもり? もう少し和やかにやろうよー。」 見かねた水瀬さんがげんなりした様子で言ってくる。 和やか?こいつと? 「「無理です。」」 声が揃う。 その瞬間周りの桐山や土生も笑いだした。 「息ピッタリじゃん、実は気が合ったりして。」 水瀬さんは予想どうり大爆笑している。
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