調教師との出会い

2/14
前へ
/14ページ
次へ
僕の名前は『水瀬 悠馬(みなせ ゆうま)』、中学を卒業して日本中央競馬会JRA競馬学校の騎手課程で3年間学び、卒業後騎手免許試験に合格してデビューした競馬の騎手(ジョッキー)だ。 騎手となって2年目の20歳の僕は、いくつかのレースに出場したが、思うような結果を出すことができていない。 しかしそんな中、僕に大きなチャンスが訪れた。 強い馬が勝つと昔から言われている11月に開催される牡馬3冠の最終戦となる菊花賞に出場することになったのだ。 関西の厩舎所属の僕が騎乗する馬は、3歳牡馬の『ススカゼプリンス』で、北海道で育成されて今は滋賀県にある栗東トレーニングセンターにいる馬だ。 僕がこの馬を見るために栗東トレーニングセンターに行くと、調教助手の『沢渡 涼風(さわたり すずか)』さんが案内してくれた。 「こちらの馬がススカゼプリンスです。」 涼風さんが笑顔で紹介してくれたその馬は、色つやが良く引き締まった馬体、そして何よりも澄んだ瞳は何か遠くを見据えているようで神秘的な感じさえ覚えた。 「良い馬ですね!」 僕が笑顔で話しかけると涼風さんが、 「実はこの馬は、北海道の私の父が経営する牧場で生まれ育ったんですよ!」 と教えてくれた。 「馬の名前の『スズカゼ』は、私の『涼風(すずか)』という名前から考えて付けた名前なんですよ!  『涼風(すずか)』は『涼(すず)』と『風(かぜ)』と書くので『スズカゼ』です。」 涼風さんが教えてくれたことに、僕は納得した。 「そうだったんですね!  沢渡さんは、いつからここで働いているのですか?」 僕が質問すると涼風さんは、 「ここで働き始めて1年程になります。  このスズカゼプリンスと一緒にここに来ました。」 とこれもまた意外なことを教えてくれた。
/14ページ

最初のコメントを投稿しよう!

3人が本棚に入れています
本棚に追加