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菊花賞を1週間後に控えたある日、調教のために栗東トレーニングセンターに行くと涼風さんが男性を紹介してくれた。
「水瀬さん、こちらが私の父です。」
すると沢渡さんのお父様が丁寧に挨拶してくれた。
「沢渡です。
娘がお世話になっております。」
僕は恐縮して挨拶した。
「水瀬です。
よろしくお願いします。」
沢渡さんのお父様は、優しそうな雰囲気の紳士的な方だった。
「水瀬さんは、菊花賞でこの馬に騎乗していただけるのですね!
ぜひ、よろしくお願いいたします。」
沢渡さんのお父様が深々とお辞儀をしたので僕は戸惑いながら、
「僕はまだまだ経験が少なくて、G1で勝利したことはないのです。
僕のような未熟者が、このような素晴らしい馬に騎乗できるのは光栄です。
どこまでできるかわかりませんが、精一杯がんばります。」
と自分の本当の気持ちを素直に伝えた。
すると沢渡さんのお父様が、
「いいんですよ!
あまり勝つことを意識しないでください。
スズカゼプリンスと菊花賞のレースを楽しんでください。」
と僕のプレッシャーを和らげようと笑顔で話してくれた。
僕は、この沢渡さんのお父様の言葉がとても嬉しかった。
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