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悪夢十夜 4話『夜の山道を走る』
こんな夢を見た。
そこは山道だった。
とても暗く、左側は崖になっているのにガードレールは無くて、操作を誤れば転落してしまうほど狭い。
なぜ俺はこんなところを車で走っているんだろうか?
助手席の女に問いかけるが、女は『知らないわ』とニヤニヤしている。
道はいよいよもって険しくなっていく。
あちらこちらには小石や木片が散らばり、それらの上を通るたびにバキリバキリという爆ぜる音が足元から聞こえてくる。
いけない! このままではタイヤが持たないかもしれない。
慎重にアクセルを踏みながら障害物を避けようとはするが、避けきれずそれらをタイヤで踏み抜いてしまう。
その度に車内は大きく揺れる。
進行方向もあらゆる方向にぶれてしまうので、崖の底に堕ちてしまわないように悪戦苦闘しながらハンドルを動かす。
それでも女は笑っていた。
声は出さず。 ニヤニヤと。
前面に集中しながら俺は横に居る女のことを考えていた。
果たしてこの女は誰なんだろうか?
背中まである長い髪。 切れ長の目、そして暗いというのに何故だか女の顔つきがはっきりとわかる。
だがその相貌は自分の記憶の中には存在しない人間であった。
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