『ひぃ…ひぃ…ひぃ』

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 まるでさび付いた金属を擦りあわせたようなその音はゆっくりとだが等間隔で鳴っていてさらに強く注視していると徐々に大きくなっているようだった。 「ひい…、ひい…、ひい…、ひい…、ひい…」  ああそういうことか。  身じろぎ一つせず見つめていて、あることに気づいた。  『それ』は大きくなっているのではない。  最初から増えてもいないし天井に貼りついていたわけでもない。  『それ』は生物だった。  まるで蓑虫のように根元には一つの腺が着いていて、それを天井の木板に引っ掛けて自分に近づいてきている。  成長しているように見えたのは単純に『それ』と自分の距離が縮んでいたからなのだ。  そして『それ』は電灯の紐の先を越えて自分のところへと堕ちてこようとしている。  あれは何なのだろうか? 恐怖も何も感じない。  ただただぼうっとこちらに向かってきている『それ』を観察し続ける。  どれくらいの時間がたっただろう?  数秒だろうか? 数分だろうか? あるいはもっとか?   時間の間隔は消えうせていた。 しかし『それ』が自分の顔に向かって進んでいることだけは理解していた。  すでに立ち上がれば届く程の距離になってまたいくつか知ることが出来た。  それは動いてないわけではない。   小さく…とても小さくだが動いていた。     
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