第十章 魔法国家スフィーニ ―Magic nation of Sufini― 

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 青年は優雅に微笑んで一礼を交わすと、形の良い唇を滑らかに動かしこう言った。 「皆様遠路はるばるようこそスフィーニ国へ。私はスフィーニ王国公認魔導師のセシリオ・ソル・ヴァーニングと申します…。」 王族の関係者の方か。皆も改まって挨拶をする。 ―え?ソル・ヴァーニングってリーディの名字じゃぁ…。 ステラははたと気が付いた。 「そして…」  セシリオは頭を上げて少し苦々しい表情をしているリーディに向き直し、再び最上級の礼をした。 「お帰りなさいませ、リーディ・ヴィエント・スフィーニ王子」 リーディは、軽くため息をつき、そして微笑んで答えた。 「ただいま」 と。  ステラ達一行はほかの従者にバルッシュの引く馬車を任せてセシリオが乗ってきた、城の馬車に皆で乗り込んだ。城の馬車であるので中は広く、シンプルながらも座席も上質な布を使っている。  そしてこの国の紋章である唐草文様があしらわれている。ステラのフランベルジェにも彫られているのと同じ模様だ。 「まっさかねーうすうす感じてはいたけど」 「姉さん僕は出会ってすぐに気が付いたんだよー」 エストリアの兄弟はのんびり話している。 ニヤニヤ笑いを隠さずに。 キャロルはあまり気にしてない模様。 「王子様であろうと、リーディはリーディですしね。」 そう、キャロルは修道院の教えである根本は人類は 平等という信念があるからである。 一番驚いていたのはステラだ。 身分などを気にしたことがない環境に育ったとはいえ、この一国の王子だという現実は多少となり彼女に衝撃を与えたのだ。 ―私リーディにかなり失礼なことをしてたのか…。 何度かひっぱたいたこともあるし。 でも、知ってても私構わずやっちゃってたかなぁ。 ちら、彼女が視線を動かし、 リーディを見るとセシリオと話をしている。  その時のリーディはいつもの冷静な感じでもなく ステラをからかうときよりももっと幼く、はたから見ると兄と弟のように見えなくもない。  ただセシリオのほうは当然ながら目上の者に対する口調で話してはいるが。
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