第十章 魔法国家スフィーニ ―Magic nation of Sufini― 

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―勇者がマレフィック・ミックスなど…。  それに、王子はだいぶ変わった。4年前の襲撃で一度彼は立ち直って、その時から少しずつ変化が出てきたことには変わりないが、かなり前向きに使命と向き合ってきた。ペンダントの仲間を探す旅に出る前に1年、本気で剣と魔法の鍛錬をした時の彼の能力の伸びは凄かった。しかし彼は、能力を伸ばすたびに自嘲気味に言っていた。 「もっと早く、真面目に向き合っていればよかった」と。 まだ後悔の念は晴れていないだろう。 しかし、彼は3年ぶりに戻ってきて少しだけ穏やかになった気もする。 おそらくそれは…彼女のおかげなのか?  王子のちょうど対角線上に座る口数の少ない、勇者である少女は少し緊張気味に、窓の外を見ていた。時たま少年の神官が話しかける言葉に相槌を打つ。一方王子は自分と話している時にちらりと目線をそらす先に彼女がいた…。 セシリオは神妙な顔でそっとそんな二人を見ていたのだ。          ☆☆☆☆☆☆  謁見の間に呼ばれ、玉座に座るフィレーンの姿を確認する。 「フィレーン王女、セシリオは?」 レオノラは静かに王女に歩み寄り尋ねた。 「帰ってくるのよ、リーディが。だから城外の船着き場まで迎えに行ったわ。まー私は数か月ぶりって感じだけど、城の皆は3年ぶりね。」  それを聞いたレオノラは胸が高鳴ると同時に、彼女は彼が3年前に彼女に告げた言葉が蘇る。  でもその当時、その言葉を彼女は拒んだ。わかっていた。彼に想い人ができたことを。それが誰なのかまでは判らなかったが。彼の使命のために仲間を探すと言って城を出て行ってから3年、忘れようと試みても諦めきれなかった。もしかしたら、もしかしたらと。 「王子が帰ってきたんですか?」  背後から声がした。振り向くと同じように魔導師のローブを身に着けている、深い茶色の髪の青年がいた見目凛々しく、妙な色気のある魔導師だ。 「よかったなレオノラ。リーディがお帰りだ。」 「ゾリア…。」 レオノラは少し項垂れた。会いたい気持ちと、今の彼の気持ちを確認する恐怖が交錯していたから。
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