第十章 魔法国家スフィーニ ―Magic nation of Sufini― 

13/20
前へ
/20ページ
次へ
城には百人弱の侍女や兵士もいたが 、久しぶりに帰還した王子の話題で持ちきりだった。 「…ずいぶん立派になって、亡くなった王配のエジット様に似てきて、たいそう凛々しく。 定めの仲間を、勇者様もいらっしゃるそうだよ?」 「おーじ様に劣らず凛々しいのかな」 緋色のローブの魔導師見習いの子供たちが、興味津々に囁き合う。 「でもおーじ様が絶対一番だよ。他にどんな人たちが見えるのかな?」 「おーじ様って魔法以外にも剣も使えるんだよね!早く見てみたいなぁ!」  そして城の門が開き、王子の従者であるセシリオの姿が見えて、一気に城内は色めき立つ。そのセシリオの隣には、赤い絨毯の上を颯爽と歩く長身の旅装束の金髪の男性がいた。  皆一瞬誰だろうと皆目を見張ったが、すぐに我が国の王子だと気が付き感嘆の声を上げる。 「あのほんの少年だった王子様が…。」 「ご立派になられて…。」 そのすぐ後ろをあでやかな黒髪の少女と、穏やかな雰囲気の青年が後に続く。その後ろに清楚な修道女。そしてしんがりを歩くすらりとした肢体の少女が見えた瞬間、一同息を飲んだ。髪の色は王子と対照的な銀で、瞳は紫、そして、 「まさかこの方が…かのリストンパーク王女の…。」 「いや、おかしいぞ?オーキッド王女は生き方知れずだったはずだ?」 ある者は懐古心を、またある者は彼女から発する不思議なオーラを、 ある者は昔この城を襲ったという魔性を連想した。 「勇者殿は女性なのか…?麗しき方だけど…。」 ―少しざわついている。 ステラは周りの異変に気が付いていたけれど、なるべく平静を装いしんがりを歩いた。 少しだけ自分のことを噂する声が聞こえるけど、あえて聞こうとせず流すよう努める。 そして、突き当りの一番大きな扉の前に到着し、セシリオが「開門!」と叫ぶと、 厳かに扉が開いた。 謁見の間の扉が開くと、玉座にはフィレーンが鎮座していた。 薄緑のロングドレスに手には硝子玉のような飾りが幾つか付いている錫杖を掲げて、ひときわ大きなクリスタルのサークレットを身につけている。ステラはあっと声を挙げそうになったが抑えた。
/20ページ

最初のコメントを投稿しよう!

1人が本棚に入れています
本棚に追加