第十章 魔法国家スフィーニ ―Magic nation of Sufini― 

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栗色の髪を靡かせた色男の手がメイのむき出しの肩に触れる。メイは慣れたようにそれを取って艶やかに笑って答えた。 「はじめまして、魔導師様」 ―いい男は好きだよ。めちゃくちゃ好き。 エストリア時代に街一番の芸妓だったメイには様々な男からのアプローチがあった。 当然彼女はこういうことには慣れている。 ―でも、誰にも本気になれないけどね。 「出会いがしらに悪いのだけど、お願いを聞いていただけないかしら?」  謁見の間を出て、左の階段を昇ると広いバルコニーがあり、そこからの眺めは先ほど船で渡ってきた海が見渡せる。リーディは目の前にいる幼馴染である彼女とここでよく遊んでいたことを思いだした。 その彼女とは、今はもうあの頃のような純粋な関係には戻れない。 「久しぶりね」 「…ああ。」 「元気だった?ずいぶん変わったから驚いた。」 「レオノラも元気そうでほっとしたぜ。」 そうやってふっと彼が笑った瞬間に、レオノラは彼の服を掴んで見上げる。 「!」 「…待ってたのよ」 ―昔から、小さいころからずっと好きだった。 忘れようとした。でも、彼はあのころよりももっと素敵になって戻ってきた。 ・・・再び恋心が強くなっただけ。 「俺は言ったはずだ。ここを発つ前に、レオノラのことは好きだけど愛せないし、別に愛したい女が出来たって」 ―その女性のことを忘れて、戻ってきてくれると期待していたけど…。 彼は、服を掴んでいる彼女の手をそっと取って、離させた。 「もう3年前に、けじめはつけたはずだ。心に嘘はつけない」 離させられた手を、胸の前でギュッと握りしめ、レオノラは俯く。つまり、彼はいまだにその女性に…本気だということだ。だけど頭でわかっていても心では納得がいかない…。 ―誰なの?その女性は誰なのよ?? 今すぐにでも問いただしたいけど、できない。そういうことを一番嫌う人だって、知っているから。 …そして沈黙が二人の間の空気を包む。一瞬だがずいぶん長い時間だと、リーディには感じられた。 その時、三つの足音が階段のほうから聞こえてきた。リーディとレオノラは驚いてそちらを向くと、 ゾリアがメイとコウを連れてやってきたのだ。
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