第十章 魔法国家スフィーニ ―Magic nation of Sufini― 

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「おーいたいた。ゾリア、ありがとね。」 「舞姫の頼みなんてお安い御用さ」 ―あーあ、ゾリアのやつ女には目がねーんだから。 ホッとした自分のことはさておき、リーディは親友の言動が相変わらずだと思いつつ、その3人の立ち位置を見てさらに苦笑をせざるを得なかった。 ゾリアとメイの間には、コウがにこやかに…立ちはだかっていたから。よく見ると目は笑っていないように見える。 「ゾリア…。」 「レオノラ、リーディ、そろそろ食事の時間だ。久しぶりだから二人でいろいろ話したいのはわかるが、レオノラ?俺だって王子と話したいんだぜ?」 「もーリーちゃんすぐにどっか行っちゃうからさあ、ゾリアさんに居そうな場所を訊いちゃったってわけよ。」 メイは軽く口をとがらせ、ゾリアは薄く笑うと行こう、と二人を誘った。  5人が謁見の間に戻ると、フィレーンもちょうどセシリオと侍女を連れて戻ってきたところだ。 「もうそろそろよ。久しぶりの会食だから、大広間に宴席を設けさせるつもり」 リーディにそう微笑んだ時、ステラがキャロルとゴードンを連れてやってきたのだ。 「フィレーンさ…じゃなかった。フィレーン王女!」 「ステラ、そんなかしこまらなくていいわよ。 あら、そのフランベルジェをずっと愛用しているのね?ちょっと見せて」 ステラは呼ばれて、ちょうどリーディたちを横切る形でフィレーンに近寄る。 同時に彼女の長い銀色の髪が流れるように靡いた。 瞬間、レオノラは見逃さなかった。 …自分の想い人がそれを、とても愛おしそうに優しい瞳で見つめていることを。 ―4年前の襲撃で心を一度病んでから、彼はこんな優しい瞳をしなくなったはず。だけど…。 思わずローブの裾を握りしめる。 ―彼がずっと想っていた人って、勇者(彼女)なの…? 「あらー刃がもうボロボロねぇ。でもここまで使い込んでくれて剣も喜んでるわよ」 フィレーンの声ではっとレオノラは我に返った。
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