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「もうすぐですね、王子。」
風を感じながら、黒髪の青年は塔から空を仰ぐ。
額にはサークレット。翡翠色の長衣を身に着けている。それはスフィーニ公認魔導師(ウィザード)の証である。
――あなたが旅立ち、もうすぐ3年経ちますね。
生まれ落ちた瞬間に選ばれし王子。その使命を果たすためにあなたは旅立ち、かけがえのない定めの仲間を連れて戻ってくる…。どんなにその日を待ち焦がれていたことか。
大空に、鷺が飛んで行った。
それを城の中庭から見ていた女性が一人。
彼女もまた、サークレットを額に身に着けローブを羽織り、静かに空を仰いでいた。
栗色の髪はハーフアップにまとめ上げられていて、知的な鳶色の瞳に鷺が映る。
可愛らしいと一言で言えばそういう風に形容される容姿だが、その瞳がそれだけではないと物語っている様だ。
「レオノラさまーー」
名を呼ばれ、一息ついてから彼女は城内へ。渡り廊下を歩いてゆく。渡り廊下の西側の塔はまだ、修復中。レオノラはちらと一瞥し、再び城内へ歩き出した。
第十章 魔法国家スフィーニ ―Magic nation of Sufini―
穏やかに船は進む。
ステラ達一行は、無事リンデル島のカナロア神を邪悪な魔物から救い、無事その3日後に出航した。
何故3日掛かったのかと言うと、カナロア神の守り人である神官プリオールが、スフィーニで魔法鍛錬を受けたいと申し出たからだ。
もちろん町の衆は揉めた。しかしながら彼の決意は固く、あの時の無力感が引き金となっているようだった。魔物に対峙してなす術がなかった、自分。ただ問題があった。留守中誰がカナロア神を守るのかと言うことだった。
そこで再び洞窟の祠へ一同は向かったのだ。
洞窟の中は以前とは打って変わって魔物の数が激減して難なく最下層の祭壇までたどり着いた。
「あの半魚人…今思えばどうやって現れたのかしら…。」
「普段はこれがこの洞窟の本来の姿なのだ…。」
プリオールは祭壇の前に跪いて、そう呟いた。そして静かに錫杖を掲げで祈りを捧げた…。
―全世界の海の神カナロア神よ…我は守り人神官プリオールなり。我思う、我が魔力(力)を高めたいが故に、この地をつかの間離れるのは許し難きことか…
すると祭壇に再び光が満ち溢れて、女神が現れた…。
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