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そしてそっと目を閉じると、銀の髪の後姿が瞼裏に焼付く。
―魔性?いや…ステラ?
昼間、「洗濯にほとんどの服を出した!」とか言って大きな綿布を無造作に巻き付けた姿でランドリーに現れてそこにいたコウが非常に困った顔をしていた。丁度俺が船に仕掛けた網を回収するために、上半身は脱いで海に潜った後でランドリーに濡れた服を出しに行くときにそれに遭遇した。
で、俺を見るなり、
「ちょっと!!いきなり入ってこないでよ!!」
って。
オイオイオイ…。胸はだけそうだって。俺の上半身を見て赤くなる前に自分はどうなんだよって
いうのもあれだし、俺は無言で畳まれた洗濯物で俺の部屋着をそのままあいつの頭から被せた。
瞬間身体に巻き付けていた綿布がばさりと床に落ちた。危機一髪。
「…お前さぁ、コウが困っているぞ。俺は困らないけど。」
いや、本音は俺も困る。
「な、何言ってるのよ!バカ!!」
状況が判断できたのか真っ赤になって怒鳴る。困った娘だ。なんつーか、変なところズレている気が。色々言ってもめんどくさいので、続けて俺は言った。
「とりあえず、それ貸してやるから布巻いてそこらへんうろつくんじゃねぇの」
「わ、わかったわよ!!」
そう言って出てってしまった。
「いや、助かったよ。」
眉毛をハの字にしてコウが洗濯し終えた衣類を抱えた。マメな奴。
「僕は男性とみられてないみたいで…。」
「つーか、変に無防備なんだ。あいつ。」
メイが自前のキワドイ踊り子の服を着せようとしたら全力で拒否。そのくせ、コウの前では、ああいう格好で平気で現れるし。何俺イライラしているんだろう?
「…変なことを思い出してしまった。」
そう呟き、無意識に腰の左に携えているレイピアに手を触れる。彼が落ち着かない時についやってしまう癖だ。
おそらく、彼女は照れているのか自分に対する言葉がつっけんどんだ。そこが可愛いとは思わなくはないけど、さっきのような無防備なところを見ると
心かき乱される。リーディは他人の行動や言動に自分の心がかき乱されることはあまりなかった。それが今はこのザマだ。
すると、その心をかき乱す張本人がやってきた。
手には昼間貸した畳まれた綿シャツを持って。どうやら自分の普段着が乾いたらしい。
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