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ついにあれから1週間が経ち、大きな島が数里先に見えてきた。
「見えてきたな。とりあえず取り舵いっぱいだ」
船は西に進行方向を変えて進んでゆく。城下町の港が見えるのだ。
「ここがスフィーニ王国…。」
ステラは眩しい朝日を感じながら港に目をやった。神秘的な霧を抜けて(進行方向が定まらず正直困ったが)見えた街は、石造りの簡素な建物が立ち並ぶ、整然とした雰囲気だ。
しかし静かに船は、城下町に面している港はすり抜けて、城のからすぐの港へ向かっている。
おかしいなぁ?とステラは思った。この国の情勢はうっすら彼女も聞いていた。
―魔性の襲撃で女王様が亡くなっているとか。でも誰かが城を護っているわけでしょ?
まずご挨拶に伺うのかな。
そして船は泊りへ入ってゆき、静かに城の近くの船着き場に停泊した。碇を降ろし、桟橋を掛けてまずバルッシュと馬車を渡らせて、それぞれ手荷物を持って久しぶりの大地に足を踏みしめる。
「清涼な気が流れていますわね…。」
修道着を慎ましく着込んだ巻き髪の乙女がが居心地がよさそうに目を閉じると、
「うっへーリーちゃんの言ってた通り、向き不向きがあるってこーいうことねー。」
と、薄絹を纏った黒髪の少女が前者と全く対照的な反応をした。
ふぅとほっとしたように息をついて馬の鬣を撫でた栗色の髪の青年は、ちらりとすぐ右にいる
長髪の青年に声を掛ける。
「…珍しくマントの上にフードも被ってる。」
「…まーな。」
そして、その彼は検問の兵士の姿を確認する。
「検問か…。ま、もう城の目の前だし」
リーディがフードを外して検問官に近づこうとしたとき、見覚えのある黒髪の青年が検問官の横に
佇んでいて、彼の姿を確認するや否やこちらにやってくる。
「あれは…!」
サークレットを飾り、したり顔で立っているその姿に彼は驚かない。
「…セシリオ!」
リーディはあああそうだ、こやつはお見通しだとばつの悪そうな顔をした。そんな彼と黒髪の青年を仲間たちは不思議そうに見ている。
「お友達かしら?」
「にしてはずいぶん年上だしね。」
コウはにこにこ微笑んでいて、ステラは何も言わずに見守っている。
―お兄さんじゃないし、友達にしては年上すぎるし
どっちかっていうと彼の家来のような…?
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