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「よくここに来たね。一人で戦い続けて苦しかったね、辛かったね。もちろん自分で自分の命を終わらせた事は決して許される事じゃない。でも気持ちは分かるよ」
と最初から最後まで認めてくれていた彼女が、微笑んでくれる。
ただ一人だけ僕の才能を信じてくれた君が笑う。
温かい安心で、包んでくれる。
優しく、背中を叩いてくれる。
「私には分かってる。君は本当に辛くて長い99回の挑戦を見事にやり抜いたんだ」
彼女はただ僕を認めてくれる。
賞を獲る事よりも、お金を稼ぐ事よりも、彼女の言葉がなによりも嬉しくて……、
僕は泣いた。
彼女は黙って僕を見つめて微笑む。静かな嗚咽を漏らしながら僕はこの世の終わりまで泣き続けた。この世が終わっても泣き続けた。もし君がいなかったら、もし君が僕を認めてくれていなかったら僕は潰れていたんだ。存在した意味も分からず消えていた。
泡沫のよう。
ありがとう。
ありがとう。
唯々、そんな言葉しか頭に浮かばなかった。
そうして、君は力強く宣言する。
「さあ、君の100回目を始めようか。これから先は君の一人舞台だ。誰も君に追いつけないし、追いつこうと思う気力さえ湧かないようなパフォーマンスを君は発揮する」
そう。
100回目の始まりを高らかに。
……そして僕は生まれ変わった。
新たな人生を始める。
遂に栄光なる100回目の輪廻転生を果たす時が来たんだ。
【おしまい】
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