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フィクションです。
…――僕は万年最終選考止まりの作家。
100回頑張れば、きっと君は偉大な人物となれるから99回を必死で頑張りなさい。
と彼女に言われて100回を目指して精一杯頑張ってきた。
しかしながら。
どんな事をしても、どんなものを作っても大賞は獲れない。
なにがダメなのかと色んな手を打って、その間にも次の手を考えて自分を鍛え続けた。作品作りの速さを求める事は当然として、需要にテーマ、キャラクター、ドラマの挿入、丁寧な感情表現や心情表現、分かり易いオチを付けたり、なんでも考えて盛り込んだ。
それでも、全てが空回り。
技術や心構えなど全てとも思えるほど手に入れたけども、結局は無駄でしかなかった。
そんな事を繰り返して、僕はある種の諦めというべきか、或いは悟りの境地に達しと言うべきなのか、そんなものに辿り着いた。有り体に言えば、賞は参加する事に意義があり、賞が獲れるか、獲れないかは自分の中で、さほど重要ではなくなっていった。
それよりも賞に参加する事で交友関係が拡がるのが楽しくなってきていた。
多くの仲間と語って、様々な刺激を受ける事が楽しくなってきていたんだ。
そして自分が認められる事もあった。
だから嬉しくてさ、楽しくてさ……。
でもね。
僕だって人間なんだ。
だから賞の結果が発表される度に、ひどく落ち込んでいた。
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