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「ピッピーではだめなのでしょうか」
「それはにんげんがたまにやるくちぶえでしょう」
「たべてもらえないのか」
「ごめんなさいトマト」
「かみさまのせいだ」
「メロンからもあやまります、ごめんなさい、ぬかよろこびさせてしまって」
「ぜんぶかみさまのせいなんだ。にんげんをけしてしまうから」
トマトは悲しみのあまり泣き出してしまいました。かみさまのせい、かみさまのせいと繰り返して。
「おれはトマトサラダになれない」
そうして、その声も小さくなり。
「なれない」
その言葉を最後に、トマトは動かなくなってしまいました。
「死んだ」
「にんげん?」
「トマトが死んだ」
にんげんはそう二言繰り返したあと、トマトを右手で拾い上げました。黒い五本の指はトマトをがっちりと掴みます。
「しんでしまったのね、いきていくりゆうがなくなったから」
桜の木はそう言って大粒の涙を流しました。
「にんげん、しんでしまったとはどういうことですか」
「ここのげんごでいうなら、おやすみということです」
「いやです」
「いきるりゆうをなくしたものはしんでしまうのです」
「いやです」
「ぎゃくにいえば、いきるりゆうがあるかぎり、このせかいではいきていけます」
「いったいだれがきめたのですか、メロンにはりかいできません」
「かみさまがきめました」
「かみさまとはなんですか」
「――神様は今日も金色の星から私たちを見ている」
にんげんは紺色の空の遠くに輝く金色の星を睨みながらそう言いました。
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