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「佐海、なにしたの?」
部活の荷物を取るため、俺はもう一度教室に戻った。俺の隣の席の花絵は、にやにやしながら話しかけてきた。部活がない日にも関わらず、花絵は受験勉強のために教室に残っていたようだ。
いつもなら花絵や頭を叩いて、なんでもねえよ、と言うところだが。
「……お前は凄いよな。誰よりも明確な目標を持ってて、もうその為に努力してる」
花絵があんぐりと口を開けて、俺の顔を不審そうに見る。柄にもないことを言い始めた俺に、戸惑いを隠せないらしい。
花絵は知らない。
俺の内側で毎日、こんなくよくよじめじめしたものが、庭で放し飼いされている犬のように動き回ってることを。
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