・2060年2月2日(月) 佐海蒼介

2/11
12人が本棚に入れています
本棚に追加
/44ページ
通学路にある赤い屋根のケーキ屋は、パティシエがケーキをつくっている様子が外から見えるようになっているのだが……俺はふるいを使ってケーキに粉砂糖を落とす行程を見るのが好きだった。今日の雪は、あのふるいから落ちる粉砂糖を彷彿とさせるような、そんな雪だった。 「ほんとさ、寿命の変異だけは他人事じゃないよね。怖いわ」 誰かの声が、聞きたくなくても聞こえてくる。 不安な思いを表に出すことで、平常心を保てるように努めているのだろう。 そうやって自分の心配をすぐにしている時点で、つくづく他人事じゃないかと、俺は心の中で悪態をついた。
/44ページ

最初のコメントを投稿しよう!