・2060年2月2日(月) 佐海蒼介

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・2060年2月2日(月) 佐海蒼介

・2060年2月2日(月) 「え、吉野ってあと三年で死ぬの?」 昔だったら、大それた話のように聞こえるかもしれない。 だがこれは、俺たちの世界では、当たり前の会話だ。 「吉野って、うちのクラスの吉野梓だよね?」 「そう、D組じゃなくてうちのクラスの。もともと一般人だったけど、先月の診断の時に縮まってたらしい、寿命」 担任が来る前の教室。生徒たちが適当な輪をつくり、話している。暖房をつけたばかりだから、屋内にも関わらず、話す生徒たちの息は白い。灰色の床も冷気をたっぷりと吸い込んでいるため、足元も冷える。 窓の外を見ると、校庭やその奥に広がる街が、みんな隙のない雪化粧をしていた。一枚の真っ白なキャンパスのようになっている。空も、どこまでいっても白い。 オセロのように、間に挟まれた俺たちもひっくり返るんじゃないか、なんて。馬鹿なことを考えてしまうぐらい、寒い。
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