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青木社長の乾杯の声に、社員たちがグラスを合わせる。
その後、会場は大きな拍手に包まれた。
都内のホテル、煌びやかなシャンデリアが照らす宴会場にて
産栄システム株式会社の創立30周年記念行事が行われていた。
社長が舞台からゆっくりと降りるのを見届けてから、
会社のイメージキャラクターの着ぐるみが静かに退場していく。
「藤本くん、一度カメラ止めていいよ。」
立食形式のパーティーだ。参加者は200人ほどだろう。
各々好きな料理に列をなしている。
「じゃあ、僕も料理取りに行っていいっすか?」
その無邪気な声に、倉田は思わずため息をついた。
「君はお客さん相手に遠慮しないね。」
「だって向こうの社長さんから、パーティーでは好きなだけ飲んだり食べたり
していいって言われたじゃないっすか。」
「それはそうだけど……この後、カメラを持って会場を回るんだから
お酒は飲まないように。」
「了解です!倉田さんの分も取ってきますねー。」
足取り軽く料理の方へ歩いていくその背中を見て。
最近の若者は……いや、彼が特別なのか。
仕事中だというのに緊張感のかけらもない。
まあ、変に萎縮されても困るだけかーー倉田しおりはそう思うことにした。
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