アニバーサリー

パーティーの二週間前。
倉田と藤本は産栄システム本社を訪れていた。
創立30周年を記念した映像の制作を依頼され、その打ち合わせをするためだった。

ウチの会社は主に企業PRや商品広告の映像制作を請け負っている。
記念映像を作るのは初めてではないが、珍しいことではある。

以前この会社からの依頼で、新卒採用説明会で流すPR映像を作ったことがあった。
先方はその時の仕事ぶりを高く評価してくれて、
今回もぜひウチに仕事を頼みたいとの話だったが。
ーー多分タテマエで。

近々30周年を祝う式典が開かれるという。
その際、社内で作成した『我が社の歩み』というスライドを
写す予定だったのだが、その出来映えに社長が満足しなかったらしい。

式典準備で忙しい中、急遽代わりのものが必要になり
業者を選定している暇がなかったのだろう。
勝手知ったるウチなら、何かと楽なのである。