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再び彼女を見かけたのは、出版社主催のパーティーだった。控え室に入ろうかとドアノブに手を掛けた時、中から声がして入室を止めた。
出版社の者が出入りをしたのを確認し、控え室の扉を開けると彼女は一人きり泣いていた。俺の姿に驚き、慌てて涙を拭う。
愛らしく頬を染めていた彼女に、何があったというのだろう。彼女の瞳が強く印象に残った。
数日後、執筆仲間のサイン会が行われ、その様子を耳にする機会があった。作家が出版社の担当である草加氏と交際中だという。
彼には書店の彼女がいたはずだ。疑問を感じ、草加氏に尋ねると、彼から苛立つ答えが戻ってきた。
「俺の責任なんです」
女性作家とはけして付き合ってはいないと、彼は一言だけ言い顔を背けた。
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