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episodeー省吾
まだ作家になる前に、君と出逢った。学生時代を隣で過ごし、作家として作品を出版したあとも、変わらず君はいつもそばにいた。
それはこの先も変わらないと、疑う必要さえないほどに君の存在は確かなものだった。
あの日、君は執拗に追いかけて来た女性に突き飛ばされ、階段から転がり落ちた。
生死を彷徨い、意識が戻ることはなかった。捕らえられた女性は俺の狂い咲くファンであり、君はただ、嫉妬をその身に受けただけだった。
「二度と来ないでくれ」
君の両親は目を真っ赤に俺を怒鳴りつけた。必死に懇願した。一年に一度だけならとそれだけが許された。
あれから、君のまぶたが開けられたことは無い。
愛しさは増す。もう一度君の声にふれたい。
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