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俺の心を奪ったまま、君は眠りの中にいる。
『省吾さん、大好きよ』
朗らかによく笑い、赤い薔薇が似合う美しい人。執筆に追われ、苦しむ俺のそばに黙って寄り添う。一生を共に過ごして行くのは君だけだ。
静かに目を閉じたらわかる。どれだけ戸惑い、惑い続けたとしても。真実はきっと見えてくる。
愛すべき存在は たった1人なのだと。
眠る君の頬にふれる。薄く開かれた唇に口づけをする。握り返さないその細い指に指を絡める。
「信じてる」
君が目覚めてくれるなら、何を差し出しても構わない。その唇が俺の名を呼んでくれるなら、突き刺す雨の下身体が打たれ続けても構わない。
抜け殻の様なこの俺に、君だけが価値をくれる。
愛しい君の名を、幾度も呼び続ける――
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