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野良猫のミミのお話
あたし、ミミ。ここで気ままに暮らしている猫よ。人間によると、3歳でキジトラっていう模様をしているらしいわ。
「ミミちゃん、元気かい?」
ここは風島っていう島らしいのだけど、気候が穏やかで日なたぼっこには最適なのよ。港でごろごろしていると、人間たちが昨日の弁当の残りやキャットフードをくれるし。でも、年を追うごとに声をかけてくれている人が減っている気がするわ。しかも、みんなお顔がしわくちゃの人ばかり。内容だって、
「お前はまだ若いからいいなあ。わしは、もう90歳だからあの世のお迎えを待つだけだよ」
とか、
「交通手段が船しかないからねえ。子どもも孫も帰ってこないよ」
とかそんなのばかり。なんだかこちらが暗い気持ちになっちゃうわ。今日の町内放送だって、
「田中佐吉さんの通夜が今晩、葬儀は明日、執り行われます」
なんていう寂しいお知らせしかしないわ。だから、港で町内放送を聞いた漁師らしい格好をしたおじいさんたちが、
「ついに人口が100人になったな……」
って、ため息をついて沈み込んじゃった。
ああ。嫌だ。こんな空気。何かいいことないかしらね。
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