ミス桜の蒲田さんのお話

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ミス桜の蒲田さんのお話

「初めまして。遠見凪と申します」 こんな高齢者だらけの限界集落に引っ越してきたっていうから、どんな変人かと思いきや爽やかな好青年じゃないの。 目鼻顔立ちがバランスよく整っているものだから、その笑顔に年甲斐もなくときめいちゃう。ちょっと色白でひょろっとしているけど、背は高いし、ミス桜好みの雰囲気ね。合格だわ。 「遠見くんは今年でいくつなの?」 「家族は?」 「どこの出身?」 あらやだ。私が見とれているうちに島の人が続々と集まってきたみたい。みんな、珍しいのはわかるけど、そんなに質問攻めにすると逃げちゃうわよ。 「俺は今年で30歳です。両親は 2人とも交通事故で亡くなっています。それからは各地を転々としているんです」 島の人たちの質問に丁寧に答えてくれる遠見くん。よくわかったけど、ちょっと立ち入ったこと聞いちゃったわね。みんなに微妙な空気が流れているわ。 「お仕事は何しているの?」 ここは、話題を変えましょう。私はそう思って別の質問をしてみた。すると、 「写真家です」 と答えてくれた。優しく笑っているけど、これ以上詳しい話は聞かない方がよさそう。私はなぜかそんな気がした。
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