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僕は案外恵まれている。
多分、それは本当の事だ。
僕は生まれつき目が見えないから、それが普通で、目が見えないことを不便だと思ったことは無いし、目が見えないから大変ね、なんて言われたって僕にとっちゃイマサラなことだ。それに目が見えないおかげであらゆる感覚が研ぎ澄まされて、自分で言ってはなんだけど案外普通の人と同じように暮らすことができていると思う。
でも、周りの人達の事は、僕にはどうしようも出来ないから、はっきりいって大きなお世話な行為に腹が立つことだってある。
僕は山崎に出会えて良かったと心の底から思っている。
僕を普通に隣に置いてくれる彼に、僕は感謝しているのだ。
僕をはれもののように扱う彼らが嫌だとは言っていないけれど、僕はそんなこと望んでないんだ。
「・・・ねぇ、もし僕が結婚したとして、いいパパになれると思う?」
「はぁ? んなもん知らねー。お前の努力次第だろ」
そんなことをいう彼が僕はとても好きだ。
「その前に、女の人とセックスできるかな・・・」
「ばっかかおめー、男は本能でどうにかすんだよ」
「・・・ははっ、何それ」
こんな会話が出来ることに、僕は多分感謝しないといけない。
「あ、ところでお前、今から空いてるか?」
「ん、空いてるけど・・・どうして?」
そう言うと、彼の顔は見えないけど、きっと山崎はニヤリと笑った。
「今日はほら、俺も失恋したし、お前も失恋したし、こんな転機だ。絶好の失恋日和だろ? で、俺は今日は絶好に告白日和だと思ったわけだ。だからこれから女の子探しに行くぞ!!」
「まじかー。告白日和で失恋日和だったらフラれるの前提になってないか・・・? 」
僕には、これくらいが丁度いい。
きっと僕の言う"このくらい"は、凄く贅沢なんだと思うけど。
贅沢なことは100も承知だから、だから少しでも、この贅沢が永く続きますように。
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