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「おい、告白日和だ。着いてこい」
「・・・は?」
僕には変な友人がいる。
山崎といったその友人は、高校の時からの友人で、たまに僕の家へと突然押しかけてきては、「告白日和」だとかなんとか言って僕を連れ出す。
僕は彼に手を引かれながら、杖も使ってあとをついて行く。
「いいか、吉村。 俺は今からあの花屋のねーちゃんに告白をしてくる」
「あのって言われても僕わかんないんだけど・・・。容姿はどんな感じなの?」
「・・・栗色のショートカットで、目がくりくりで、八重歯が可愛い・・・」
「うわー、山崎の好きそーなタイプだね」
「うるへー、そこで黙って見とけよー」
「はいはい」
そう言って彼は僕を置いて花屋の、仮にはなちゃんと呼ぼう。はなちゃんの元へとかけて行く。
パコパコと彼の古びたつっかけの音が軽快に音を立てるのが聞こえる。
「・・・付き合ってください!」
「え・・・えぇ」
「そのえぇは了承のえぇですか!?」
違うだろ。
見えなくたって分かる。彼女の困ったような声を聞いたら誰だって予想がつく。
「・・・ごめんなさい・・・」
その言葉を聞いて、山崎はチッと舌打ちをすると、「この花屋の花めっちゃアブラムシついてましたーーーーっ!!!」と叫んでから足音荒く僕の元へと戻ってきた。
「どうだった?」
「ふん、聞いてるくせに」
「ははは・・・!」
彼は僕の座っているベンチに腰掛け、タバコに火をつける。
「あーあ、今回もダメだった」
匂ってくるタバコのフレーバー。
「つい2週間前も告白日和だっていって告白してたよね?」
「そうだ・・・、今回は手応えあったと思ったんだがなぁ」
・・・どこが?
そう思ったが、言わなかった。
定員さんの表情すら見えないが、声の感じや仕草の音で大抵相手の考えることは分かるようになっていたから、彼女が困っていたことはよくわかっていたのだ。
「・・・彼女の、どの辺がよかったの?」
聞くと、彼は、むー・・・と何やら呟いて、「顔」と息を吐いた。
「うわーサイテー」
「うるせーなぁ、世の中結局顔なんだよ」
「そうかなぁ・・・、僕にはわかんないや」
彼は僕の言葉に「あー、その辺お前楽だよなー」と笑う。
そう、僕は生まれつき目が見えないのだ。
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