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僕は、目が見えない僕をこんなに連れ回す人間を他に知らない。
高校生の時、僕は親に頼んで普通の県立高校に通っていた。
あいうえお順で、丁度前の席になったのが、山崎だったのだ。
目が見えないことで、クラスの人から「なんでも言ってね」とか「手をひこうか?」とか言われていたが、(もちろんそれだって本当に有難かった)山崎は恐らく僕のいる方へ椅子を向けて、
「お前オナニーとかオカズどーしてんの?」
彼は高校生男子がするような会話を始めた。
「俺らみたいにエロ本読めねーじゃんか、どーすんの? 声? 声だけか? 音派か?」
ケケケと心底楽しそうに笑う彼を、僕はとても普通だと思った。
凄く普通、僕が憧れてたような巫山戯た会話。
「そうだね、音・・・かな? なんならいい音教えてあげようか?」
「えっ何それ! イヤホンで聴きながら抜けるとか? マジおもしれーー!」
耳に入る彼の音が心地いい。
普通ってものすごく普通じゃない事だ。
意味わかんないけど、何かと黒歴史を残すことの多い高校生の時くらい、こんなこと思ってもいいんじゃないかな。
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