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彼と一緒ならバカが出来る。
そう認識したのは、彼と出会って比較的すぐの事だった。
だから、今彼が、彼なりの優しさでオレンジジュースを無関係の定員さんにかけた出来事だって、おいおいは馬鹿だったと笑い飛ばせる事になるんだろう。
いやなってもらわないと困る。
「本当にごめんなさい!!!」
「いえいえ、大丈夫ですって! 熱くなかったから火傷だってしてませんし・・・」
定員ちゃんは、僕のよく知る高めの声で一生懸命答える。
「な、定員ちゃんもそう言ってるし大丈夫だってー」
「元はと言えばお前が・・・!!!」
溢れる怒りが大洪水を起こしそうだ。
おもむろに横にいた山崎の首元ら辺を掴み、下に下げると、ゴチンッ! と鈍い音がして山崎が悲鳴をあげる。
「いたぁっ!! お前、もうちょっと加減しろよ! 俺ァなぁ、お前が定員ちゃんと近づける機会を作ってやろうと・・・ぐはぁっ!」
山崎の腹辺りを殴ってやった。ちゃんと殴れたかな? まぁこの際どこでもいいや。
「・・・本当にすいませんでした。クリーニング代くらいは出させてください」
「本当に大丈夫ですから!!! ホントに!」
そう押しきる彼女は、こんな公共の場で注目を浴びているのが嫌なのかもしれない。
盲目の障害者に謝られているとなれば尚更だ。
どんな光景なんだ一体。
僕も見てみたいよ。
もう一度頭を下げてから、僕らは逃げるようにカフェを後にした。
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