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練習4~99
そして次の日の放課後、体育館裏。
「好きです。私と付き合ってください」
僕は解人に告白された。
心証としては、″可もなく不可もなく”といったところだろうか。
「駄目だ」
解人が落ち込んだように言った。
「人生初の4回目の練習だったが、失敗だ」
少し鼻につくセリフだが、本気で落ち込んでいるようだったので特段そこには触れなかった。
「何が駄目だったんだよ。別にできてるじゃねえか」
「『可もなく不可もなく』と思っただろう」
「うっ」
何故わかる。
「それじゃ駄目だ。告白することが目的ではない。『告白してOKをもらう』ことが目的なのだ」
「まあわかるけどさ」
「そうだ、修正点を探そう。なあ問也、告白のセリフ的にはどうだった」
「……うーん、そうだなあ。ユニークさは無いが、ストレートに伝わる良いセリフだと思ったけど」
「なるほど、ではとりあえずセリフはこれでいこう。あとは別の条件を揃えるか」
解人は鞄から本を取り出し、そこに何かを書き込んでいく。
「解人、その本なんだ?」
「これか? これは私が今回の練習にあたって用意したバイブルだ」
そう言って解人は僕にその本を差し出す。
革製のブックカバーを外して、表紙を見る。
大きくポップな文字で『100%成功! 異性への愛の告白術』と書かれていた。
「…………」
「先程お前が良いと言ったセリフもそこから抜粋したのだ。間違いないだろう」
迂闊なことを言ってしまっていた気がした。天才の未来が心配だ。
「さて、セリフの次はなんだ? ふむふむ、ロケーションか。『告白にはその場の雰囲気が重要! 成功率を高めるために一番大事かも!?』なるほど……」
僕の手からバイブルを奪い返して、解人は熟読しながらブツブツ言ってる。こいつ、こんなにバカな感じだったか?
小学生の頃、出会った当初はこんなのじゃなかったはずだ。
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