練習4~99

1/3
32人が本棚に入れています
本棚に追加
/8ページ

練習4~99

 そして次の日の放課後、体育館裏。 「好きです。私と付き合ってください」  僕は解人に告白された。  心証としては、″可もなく不可もなく”といったところだろうか。 「駄目だ」  解人が落ち込んだように言った。 「人生初の4回目の練習だったが、失敗だ」  少し鼻につくセリフだが、本気で落ち込んでいるようだったので特段そこには触れなかった。 「何が駄目だったんだよ。別にできてるじゃねえか」 「『可もなく不可もなく』と思っただろう」 「うっ」  何故わかる。 「それじゃ駄目だ。告白することが目的ではない。『告白してOKをもらう』ことが目的なのだ」 「まあわかるけどさ」 「そうだ、修正点を探そう。なあ問也、告白のセリフ的にはどうだった」 「……うーん、そうだなあ。ユニークさは無いが、ストレートに伝わる良いセリフだと思ったけど」 「なるほど、ではとりあえずセリフはこれでいこう。あとは別の条件を揃えるか」  解人は鞄から本を取り出し、そこに何かを書き込んでいく。 「解人、その本なんだ?」 「これか? これは私が今回の練習にあたって用意したバイブルだ」  そう言って解人は僕にその本を差し出す。  革製のブックカバーを外して、表紙を見る。  大きくポップな文字で『100%成功! 異性への愛の告白術』と書かれていた。 「…………」 「先程お前が良いと言ったセリフもそこから抜粋したのだ。間違いないだろう」  迂闊なことを言ってしまっていた気がした。天才の未来が心配だ。 「さて、セリフの次はなんだ? ふむふむ、ロケーションか。『告白にはその場の雰囲気が重要! 成功率を高めるために一番大事かも!?』なるほど……」  僕の手からバイブルを奪い返して、解人は熟読しながらブツブツ言ってる。こいつ、こんなにバカな感じだったか?  小学生の頃、出会った当初はこんなのじゃなかったはずだ。
/8ページ

最初のコメントを投稿しよう!